おもちゃ・こども・のはら・うた

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土屋多喜栄

 ≪自殺≫


 ある日、友を連れて訓練にいくと、先生達が何かおちつかない
 様子で、ざわざわと話していました。
 何かと思って聞きますと、そのお母さんが障害児の子どもを連れて
 ガス自殺をしてしまったというのです。
 お母さんが障害児の機能訓練のために入院している間に、御主人に
 他の女の人ができてしまった、というのです。

 どの肢体不自由児の本を見ても、障害児の母親が一生懸命に
 ならない限り、その子は歩くことができないと書かれています。
 訓練士の先生も、お母さんがもっとしっかりやらなければ立てません
 といわれます。
 そのとおりかもしれません。
 しかし、あまりそのことに障害児の母親を追い込んでしまうのは、
 このようなことにしてしまうのではないでしょうか。

 障害児の母親も生きているということを、もう少し考えなければ
 ならないと思います。
 障害児がいるけれども心の中には、「あそび」というか「ゆとり」
 というか母親も生きているということを忘れてはいけないと思います。


        (「障害児の娘と保育の仕事と」より
             著:土屋多喜栄  発行:フレーベル館)

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 注☆
  この本が書かれたのは、昭和55年ですから、現在では
  母親やハンディを持った子どもへの対応は、かなり変わってきて
  います。
  土屋多喜栄さんは、都庁で保健婦長を務め、練馬高等保母学院
  専任講師もなさっていた方ですが、第三子の友ちゃんが重症の
  脳性小児マヒだった為、自宅を開放して育児園を開設。
  その後、認可保育園として運営をなさっている素晴らしい方です。


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